幕田魁心
展示会
【展覧会情報】
展覧会名:刻(とき)を超えて 幕田魁心 書の世界
会期:2023年11月19日(日)〜2024年1月14日(日)
開館時間:10:00 – 17:00 (入館は16:30まで)
休館日:火曜日定休(火曜日が祝日の場合は翌日)11月25日(土)は、シンポジウム開催のため、休館。年末年始は、12月25日(月)~2024年1月1日(月)休館。
入館料:一般800円 中高生500円 小学生以下無料 障害者手帳をお持ちの方無料
主催:公益財団法人 鋸山美術館
後援:富津市、富津市教育委員会
お問合せ先:公益財団法人 鋸山美術館 〒299-1861 千葉県富津市金谷2146-1 電話 0439-69-8111 FAX 0439-69-8444 E-mail:voice@nokogiriyama.com HP:https://nokogiriyama.com
会期中のイベントについては、イベントのページをご覧ください。
幕田魁心様は、以下の日程で在館の予定です。 11月19日(日)、23日(木・祝)、26日(日)、12月3日(日)、10日(日)、1月7日(日)、14日(日)
*詳細は美術館までお問合せください。
書とは心である
書とは心である。
書の修行は心を鍛えることであり、書の成長は心と人間性を成長させていく。
人が最も大切にしなくてはいけないものが心である。
心の意味は広い。
子供を大切にする思いやりの心。
新しいことにチャレンジしようという心。
偽りのない、自分の感情を表す心。
花を見て美しいと思う心。
仏教では肉体に対する精神を指したりもする。
つまり、理性・知識・感情・意志・精神など、人として最も重要なものを表す言葉として使われる。
書とは何か?と聞かれることがある。
AIやパソコンの時代に、人はなぜ書を書くのか?
なぜ、小中学校でいまだに習字の時間があるのか?
その答えが文字を綺麗に書くためだけであるならば、
パソコンやスマホで文字を打つ時代において、学校で学ぶ必要はないだろう。
書を学ぶことは心を学ぶことである。
心を大切にする日本人だからこそ、日本では書を書き続けるのである。
私の名前は幕田隆、書家としての雅号は幕田魁心。
書を日本で誰よりも愛し、書を通じて心を表現したいと考えている。
私は18歳から53歳まで35年間、毎日5時間筆を持ち書き続けるも、書への渇望は尽きず、勤めていた高校書道科の教員を退職し、
53歳から72歳まで毎日8〜10時間、筆を持ち続け、6書体(篆書、隷書、楷書、行書、草書、漢字仮名交じり書)全てを極めるものの、いまだに美の極限に達するには至らず、どうしたら作品を通じて、心を伝えられるものなのか苦悩し続けている。
昭和22年5月6日、福岡県北九州市に生まれる。
父は八幡製鉄所で働き、日本が戦後復興していく姿を間近で見る。
また、同時に田んぼでメダカを捕まえるなど、田舎の原風景を感じながら育つ。
6歳から書を習い始めると同時に剣道も習う。
戸畑高校時代には、書道部と剣道部に所属し、剣道でも頭角を表す。
ただ、書のなんとも言い難い魅力が勝り、書家を目指す。
書家の登竜門である大東文化大学に入学。
唯一の師である安藤榻石と出会う。
大学卒業後、千葉県の高校書道科の教員として働きだす。
25歳の時に安藤榻石が若くして亡くなる。
書壇に属さないと書家として認められない時代であったが、
書壇に入らず、展覧会にもコンテストにも出品しなかった。
それは安藤榻石以外に師と仰げる人がいなかったことや、他人の評価ではなく、自分の美を見出し、書の本質である心を極めるためであった。
書壇に入ると会合や雑務で時間が取られることが多くなってしまう。
限られた時間の中で1分1秒でも多く、筆を持っていたいと思っていた。
教員時代は練習不足でイライラすることが度々あった。
そんな時は学校を休んで一日中ひたすら練習をすることで解消していた。
書けないことがストレスになっていた。
40歳の頃、我慢できずに退職しようという思いもあったが、家族の生活を考えると踏み切れない。
書道部と剣道部の顧問をしていたが、書と剣は同法であるという考えのもと、書の勉強方法を剣道に置き換えて指導した。すると、生徒は急速に強くなっていきインターハイに出場するまでになる。
そして、その教え子が現在剣道の教員として全国制覇を成し遂げる。
53歳の頃、子供達が一人前になったのを機に教員を退職し、念願であった書に打ち込むことができるようになる。
週に1日は、千葉大学に講師として通っていたが、それ以外は筆をもち書ける喜びに満ちていた。
退職と同時に、“極める楷書”という本を出版する。
出版社の社長から絶賛を受け、好きなようにどんどん出版してほしいと言われ、その後、1年に2冊のペースで出版を続け、現在36冊になる。
中でも、印象深いのは
臨済宗龍源寺住職であった故・松原泰道禅師の心の言葉を書き上げた“一期一会”。
また、
メダカが絶滅に瀕している報道を見て、昔、田舎の畦道で手ぬぐいでメダカをすくいピチピチと跳ねていた。その光景を思い出し、メダカの学校という歌はどうなるのであろうかと思い書いたのが“書になった童謡たち”。
ニューヨークやパリ、中国、韓国といった海外での個展活動を展開していく中で、
2016年には、フランスにて日本での活動やマドレーヌ寺院への作品収蔵が認められ、アンクラジュマン・ピュブリック(フランス社会功労奨励勲章) 王冠付(金)勲章(旧コマンドール・3等)を受章している。
2019年10月にパリ日本文化会館にて、フランスで2度目の個展を開催する予定となっている。
2020年6月には、37冊目となる“書でいざなう奥の細道”を出版する予定である。
芭蕉が歩いた道を、実際に訪れ、芭蕉が見た風景を見て回りながら芭蕉の句を書き上げており、2020年秋には中尊寺や山寺にて個展を開催する予定となっている。
現在、月に2度、東京駅の八重洲地下街にて書道教室を開いている。
教室が終わると、銀座の毛利バーに飲みにいく。
オーナーの毛利(カクテルの世界チャンピオン)とは高校時代の親友である。
郷里の友人との会話は、書から一歩離れて一息つくことができる場所となっている。
ソフトバンクホークスの王貞治さんや、元小結の舞の海さんとの出会いもこの毛利バーであった。
毎月4〜5日は鴨川にて作品を書くための合宿を行うが、その合間に磯釣りを楽しむ。
大自然と対峙し、発想の大きさを求め、
ウキの動きに集中し、ウキが引いた瞬間竿をあげるその一瞬、まさに作品制作において、筆の穂先の先までコントロールをし、力の入れ具合で線の表情が違ってくる瞬時の感覚を磨き上げている。
今興味を持っているのは、中国漢の時代(紀元前206年~)の木簡や竹簡、また土偶である。
完成されたものよりも、書体が完成する前の産みの苦しみが見え隠れするものに魅力を感じている。
土偶は強烈な造形力、迫力、精神力、そして土に神の精神を求めた造形が素晴らしい。
ぜひ、土偶の研究者と懇談し、あの感覚をも自分の中に取り入れたいと思っている。
魁心の魁は先駆け(さきがけ)という意味であり、心はそこに心有りという意味が込められている。
誰の真似でもない独創的で美しく、心が伝わるそんな作品を書くことを目標にして、今なお苦悩している。
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